光触媒とは?
光触媒は、太陽や蛍光灯に含まれている紫外線を吸収して、化学反応を起こす触媒の総称です。
身近には植物(光合成)の葉緑素、鉱物の代表選手としては酸化チタンが光触媒です。
光触媒反応としての酸化還元反応を起こし、抗菌・防汚、脱臭効果をもたらします。
院内感染、風呂やトイレのカビ、窓ガラスの汚れ、
自動車のガス、悪臭、飲料水中のトリハロメタン。
これらすべては有機物や窒素酸化物などであり、
私たちの生活を脅かすものです。
化学薬品を使用せず、
自然の力でこれら有害物を除去したい。
そんな願いを叶えてくれるのが「光触媒」です。
酸化チタン
メガネフレーム、ゴルフクラブ、航空機の機体材としても用いられる金属チタンの酸化物。
塗料や磁器原料、合成樹脂、繊維、電子材料など利用。
その物質的な安定性と安全性の高さから、
食品添加物としてアメリカでは1968年、
日本では1983年に認可。
食品、口紅などの化粧品にも広く利用。
酸化チタンは生きている!-光合成の原理に似た光触媒のしくみ
遥かなる太古から地球環境を浄化し、生命に多大なる恩恵をもたらしてきた植物たち。
その植物たちが繁茂する原動力となった生体システムが、光合成サイクルでした。
鉱物が行なう光触媒のしくみは、植物が行なう光合成とよく似ています。
植物光合成では葉緑素を触媒に、光エネルギーを使って水と二酸化炭素から酸素を作り出します。
鉱物光触媒では、酸化チタンなどを代表する光触媒半導体金属を触媒に、光エネルギーを使って、
空気中の水と酸素から活性酸素(主にヒドロキシラジカル)を作り出します。
酸化チタンへの光照射によって、水が正孔による酸化分解を受けて生じるヒドロキシラジカルは、
120kal/molという大きなエネルギーを持っています。
表1から有機物を構成する分子内の、各原子間の結合エネルギーは、ヒドロキシラジカルの
エネルギーに比べて小さいことが分かります。
つまり、ヒドロキシラジカルは、これら結合を簡単に切断出来るエネルギーを持っているのです。
また、表2より、酸化力が強く脱臭能力に優れていると言われるオゾンよりも、
ヒドロキシラジカルの方が酸化力は強いことが分かります。
各原子間の結合エネルギー(kcal/mol)
ヒドロキシラジカル | 120 |
---|---|
C – C | 83 |
C – H | 99 |
C – O | 84 |
O – H | 111 |
C – N | 70 |
N – H | 93 |
ヒドロキシラジカルの酸化力の比較表(V)
ヒドロキシラジカル | 2.80 |
---|---|
酸素原子 | 2.42 |
オゾン | 2.07 |
過酸化水素 | 1.77 |
塩素 | 1.36 |
※表1.2は「色材」、71[2],114(1998)より抜粋
この発生したヒドロキシラジカルの酸化力によって、有害有機物・ばい菌を分解し、
無毒な炭酸ガスや水に変え、環境をクリーン化します。
また、 無機の汚染物質であるNOxやSOxなどは酸化して、希硝酸や希硫酸に変えます。
このように、鉱物体である酸化チタンは神秘的な特質を持っているのです。
補足1
伝導帯に励起された電子の持つ還元力により酸素が還元されますと、
スーパーオキサイドアニオンが形成され、酸化力をもつようになります。
しかし、正孔の持つ酸化分解力の方が強力です。
また条件によっては、直接正孔が有機化合物と反応して、酸化分解することもあります。
補足2
反応により発生する活性酸素(ヒドロキシラジカル)は、通常大気中に存在し、
また体内でも常に生成しています。
この活性酸素は大量に体内に取り込まれると、人体に悪影響を与えてしまうことがありますが、
酸化チタンでの光触媒反応によって生成される活性酸素は、あくまでもコーティング表面で
進行するものであり、空中に浮遊することはありません。
また、活性酸素自体の寿命が非常に短いため、体内に取り込まれることはありません。
日常生活で活性酸素が役立っている他の例として、消毒液として一般的に使用される
オキシドール(過酸化水素)が挙げられます。
オキシドールは皮膚表面で活性酸素を生成することで,細菌や雑菌を消毒するという働きを持っています。
往来の抗菌剤との比較
抗菌剤 | 効果・機能 | 長所・短所 |
---|---|---|
酸化チタン(コーティング) | 抗菌性や抗カビ性、防汚、 大気・水質浄化、親水性 |
・無害、半永久的 ・クリーンエネルギー利用 ・菌が出す毒素や菌の死骸まで分解 ・光が必要 |
無機抗菌剤 | 抗菌性のみ | ・毒性と効果の兼ね合い ・色の変化 |
有機抗菌剤 | 抗菌性や防カビ性のみ | ・毒性の問題 ・長期持続性がない |
※光触媒酸化チタンは、菌が出す毒素・菌の死骸【菌の死骸が素材表面を覆うと、抗菌効果が低減】まで
分解できるが、その他の抗菌剤は分解除去することはできない。